「最も美しい目を持つ」と評され、フランスの良き時代を代表する映画俳優、ミシェル・モルガンが12月20日、96歳で亡くなりました。彼女は、1920年2月29日生まれです。
多くの名作を残しましたが、その中でも『霧の波止場』は世界的に有名な映画です。
原作はPierre McOrlan、脚本はJacques Prévert、監督は当時新進気鋭のMarcel Carnéでした。
当時すでに名優と評されていたジャン・ギャバンのパートナーとして、ミシェル・モルガンが17歳で抜擢され、この映画で一躍大女優への道が開かれました。
「最も美しい目を持つ」と彼女が評されるようになったのも、この映画がきっかけでした。
映画の中で、ジャン・ギャバンが次のように言うのです。
"T'as d'beaux yeux, tu sais"
(君は美しい目をしているね。わかってるかい?)
とてもロマンチックなセリフですよね。
しかし、このセリフは原作では出てきません。
そして、元のシナリオでは、「君は美しい足をしているね」だったのです。
はじめ、プレヴェール自身の脚本で足を褒めるセリフだったのですが、ミシェル・モルガンが抜擢され、彼女を見たプレヴェールがその美しい瞳にインスピレーションを得て、セリフを書き換えたと言われています。
また、この映画ができた1938年は、当時はまだフランスでも検閲が厳しく、露骨なシーンなどは全て厳格にコントロールされていました。セリフが書き換えられなければ、検閲にひっかかったのではないか、とも言われています。
この変更がむしろ大ヒットを呼び、ミシェル・モルガンもこの映画も、そしてこのセリフもとても人気になったのでした。
フランス人なら大抵の人はこのセリフを知っているのではないでしょうか。
ついでながら、この映画が日本で公開されたのは、戦後の1949年12月29日です。
作家、ジャーナリスト、哲学者、脚本家、映画批評家のモーリス・クラベルは1976年に次のように言っています。
「この映画は一つの時代であったと言える。愛というものが永遠という言葉に響きあった最後の時代であったと言えるだろう。それは自由な愛の歴史的な一場面だった。それ以前には自由がなかったし、それ以降には愛がないのだから・・・」
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