香りによるマーケティング


匂いや香りは、わたしたちに非常に大きな影響力を持っています。


私たちは匂いを大脳辺縁系で記憶します。

この大脳辺縁系は、わたしたちの記憶の形成と情動の発現に大きな役割を果たしています。

大脳辺縁系は思い出を呼び覚まし、心地よさを感じさせてくれたりもします。


フランスの家具・家電販売デパートConforamaは、次のような実験をしました。

室内装飾品の販売スペースに限り、微弱な香りを放ちました。

そうしたところ、この販売スペースは、通常の2倍の集客に成功し、38%の売り上げ増加という結果になったと発表しています。

ただし、どんな香りを放ったかについては、シークレットとなっています。


また、2013年にベルギーの心理学者のチームは、次のような実験をしています。

本屋さんで微かなチョコレートの香りを流しました。

そうしたところ、料理関係の本と恋愛小説の本棚のほうへ、普段の6倍の人が向かったといいます。


こうした実験が示すように、マーケティングとして嗅覚を活用する場合、目的に応じて香りを選ぶ必要があります。


得意客をひきつけておくためには、レザー(日用品のほか、香水の成分にもよくレザーの香りが入っています)や木の香り、暖炉の火の香りなど、なじみがあるリラックスした気分にさせてくれる香りがよいとも言われています。


リラックスの香りとしては、ユリやラベンダーも良いそうです。


さて、一方で消費者としては、わたしたちは香りによって行動をコントロールされてしまうのだろうか、という疑問が浮かんできます。


研究者の言うところでは、惚れ薬のようなそれほど強力に人を動かす香りの分子や微粒子というものは存在しないということですが、気持ちが良い状態にさせるには十分効果があるということです。


15日間にわたってイチジクの花の香を毎日少しずつ嗅いだ被験者は、心臓の鼓動のリズムがゆっくりになり、声の高さが低くなり、ストレスが減少したという結果も出ています。

ただし、実験チームが言うには、被験者が非常に強いストレスの場合は効果がでないそうです。


したがって、わたしたちが嗅いでいる匂いはわたしたちのウェルビーイングに貢献してくれるものであり、行動をコントロールするとまでは言えないようです。


店舗等でこうした香りの効果を使おうという場合には、音楽や装飾等その他の要素との統一性を考える必要があります。


例えば、元気を与える柑橘系の香りと、優しいチェロのBGMではあまりあわないでしょうし、ラベンダーの優しい香りとズンバのリズムはあわないと言えるでしょう。


Mellow Yellowは、2015年以来、すべての店舗でEmosensによって開発された香水を使っています。これは、主にフランボワーズの香りだそうです。これによって、典型的ではないイメージの形成と同時に、優しく甘い雰囲気作りにも貢献しています。


現代では、次第にロゴと同じように匂いによるブランディングがMustになりつつあります。

様々なエージェンシーが言うには、弁護士、医者、カジノ、美術館、パーキングといったフィールドでは、こうしたブランディングが広がりつつあります。


ここ5年でこうした市場は爆発的に成長しており、わたしたちの時代がより積極的に人々の感覚に訴えるマーケティングが必要になってきています。

一つには、わたしたちの世界が次第にバーチャルになってきており、こうした感覚の次元というものがブランディングにおいて非常に大きな役割を果たすようになってきています。


フランスのホテルグループAccorは、各顧客が自分の部屋に入った時に、リラックスできる雰囲気を出すため、例えば中近東のお客さんには中近東、アジアのお客さんにはアジアの香りがするような準備をしているということです。


仕事場の香りというものも、最近フランスでは話題になっています。

これに関しては、フランスのCrédit agricoleという銀行は、一つは顧客の待合ホールでの香りであり、300以上の支店においてルバーブと麝香、柑橘系の香りを出して、待っている時間のストレスを解消するということを実施しており、これは実際に効果が出ているということです。

ただし、社員が働いているところでより落ち着いて、かつダイナミックに働けるような環境を作るために香りを導入しようとしたところ、これについては統一的な結果が出ておらず、効果があまり出ていません。なぜかというと、様々な香水を試すと、常に10%の社員が嫌いだという拒否反応を示すということです。稀に、すべての社員が嫌いだという香りもあります。例えば、お酢の匂いはほとんどの社員がNonだったということです。

しかし、その他の匂いについては好きなにおいとは非常に主観的なものであるため、同じ仕事場に一つの香りを導入することはできないでいます。


パーキング経営会社Q-Parkでは、南国のモノイオイルの香りをパーキングに流すことによって、パーキングを使う顧客に自分が過ごしたバカンスの想い出を起こさせる試みを実践しており、実際に評判が良いということです。


フランスはじめ、諸外国は香水の文化があるため、日本で同じようにすれば同じかといえば実験を繰り返す必要があると思いますが、こうした視点からマーケティング対策をねるのも有効だと考えます。




Espace MUSE のクリエイティブ・アイディアノート

総合マネジメント事務所エスパスミューズの公式ブログ。