融合と再発見!リールPalais des Beaux-Arts美術館の試み


フランス北部、リールにある美術館Palais des Beaux-Artsの館長Bruno Girveauは、数年前から新しい試みに取り組んでいます。


OPEN MUSEUMです。


これは、絵画や彫刻の分野に限らず、すべてのアーティストによって館内にある作品を新しく見直してもらおうというものです。


具体的に例をご紹介しますね。


第一回目の試みでは、Airというロックバンドが参加しました。

ロックバンドと美術館、どうやって?と思われた方もいらっしゃると思います。


あなたがビジターとして、普段通り、展示されている絵を鑑賞すべく、ゆっくり進み、気に入った絵の前で佇みます。

すると、音楽が流れてきます。生演奏の音楽です。

目の前の作品にインスピレーションを得たAirの即興演奏です。

視覚情報が圧倒的に多い絵画鑑賞に、Airの音楽が加わることで、新しい芸術作品の融合が生まれた瞬間でした。


第二回目は、ドイツのアーティストINTER DUCKというグループ。



ドナルドダックをテーマにした作品が掲載されました。とてもユーモラスな作品で、美術館が身近で陽気な存在になりました。


第三回目には、Zepという漫画家が登場。


彼は本当なら美術館の壁に落書きをしたかったそうですが、さすがにそれは許可がおりませんでした。

その代わりに、プロジェクションマッピングを使って館内に落書きしたということです。



そして今回第四回目の参加者が、パリ・ロダン美術館の前にある三ツ星レストランのオーナーシェフであるAlain Passardです。


彼は、かなり有名なシェフです。

1990年代に、肉をほとんど使わず、野菜中心のフレンチを打ち出したことでも知られています。

そんな彼が、自身の料理以外の作品を展示することになりました。


彼が言うには、

「ぼくの父は音楽家で、祖父は彫刻家だった。母はクチュリエ(縫製家)だった。だから、ぼくの血には芸術家や職人の血が流れているよ。

子どもの頃からいつも手を動かすことに興味があった。今だってぼくはサックスフォーンをジャズマンに習っているよ。絵も描くのも好きだ。コラージュもやるんだよ。」


面白いのは、彼がコラージュを始めたのは、ホテルのレストランのコンサルタントとして日本に行ったことがきっかけだったそうです。


夜、日本のホテルでなんとなく眠ることができず、ホテルのスタッフにはさみとノリを借りたそうです。

そうして、一晩中新聞紙を切って貼り付け、コラージュをして遊びました。

できた作品はすべて、自分の料理のレシピを再現したものです。


彼はこれを機に、パリに帰ってからもこのコラージュ作品に取り組んでいました。

それを知ったフランス大手であり老舗の出版社Gallimardが目をつけ、彼のレシピを再現した芸術作品と、その下にレシピを掲載した本の依頼があり、出版されたそうです。




今度のPalais des Beaux Artsの展覧会では、彼自身の作品の展示とともに、美術館所有の展示作品とコラボして彼のコンセプトで新しい空間や芸術を表現するということです。



フランスに豊かな文化が育っている背景には、分割や細断とは真逆に、大地に根を張り、壁を突破し、多様に絡まりながら成長していくことを許し励ます風土があるからだと感じます。


そんなフランス文化を非常に濃縮して表現する企画展だと言えますね。





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