グランド・ツアーとは、17世紀の終わりから少しずつ人気が出て、18世紀ヨーロッパで流行した旅行・ツアーのことです。
しかし、現代の旅行と比べると、少し変わった特徴があります。
ここでは、18世紀グランド・ツアーと現代ツアーのちがいを通して、18世紀グランド・ツアーの全体像をお伝えいたします。
●18世紀グランド・ツアーと現代のツアーのちがい
1.ツアーに参加する人
現代ツアーは、旅行会社による様々な企画があり、値段設定から旅行期間まで多様性があるため、多くの人が国内旅行・海外旅行を経験できます。
一方で、18世紀グランド・ツアーの参加者は、主にイギリスを中心とする欧州の上流階級の青年たちでした。
上流階級の青年たちと共に、著名な哲学者や作家が家庭教師として参加しています。
例えば、ジョン・ロック、アダム・スミス、トーマス・ホッブス、ジョージ・バークリー、ウィリアム・ホワイトヘッド、ジョゼフ・アディソン、ベン・ジョンソン、シャトーブリアン、ヴォルテール、モンテスキュー、ルソー、などなど・・・錚々たる面々ですね。
こうした知識人ががチューターとして青年貴族達の旅に同行したのです。
また、当時の画家や建築家や音楽家といった芸術家たちもこのグランド・ツアーに大勢向かったといいます。
2.ツアーの目的と目的地
現代ツアーの目的には、様々なものがあります。
娯楽、自分探し、メモリアル、などなど、多様な目的があげられます。
一方、18世紀グランド・ツアーに参加した青年貴族たちの目的は、一言でいえば教養を身につけることでした。
その目的地とされたのは、主にフランスとイタリアです。
彼らは、フランスではフランス語やフランスのsavoir-vivre(社交術・外交術)といった宮廷人としての知恵を見につけたり、イタリアではローマ帝国の遺跡やルネッサンス芸術に触れて審美眼を養いました。
実際に肌で文化を感じ、人々と交流し、最高レベルの芸術に触れることで教養を養うことを目的にしたのがグランド・ツアーだったのです。
この目的をきちんと完遂するため、多くの貴族には一流の家庭教師として上述の哲学者や芸術家が同行したのでした。
このため、貴族の中には、大学進学よりもグランド・ツアーを選択する家庭もありました。
今この選択を聞くと驚く人もいるのでは?
しかし、この時期のイギリスの大学は素晴らしい学びの場として機能していなかったため、子どもやファミリーのことを真剣に考える貴族がグランド・ツアーを選択するのはそれほど驚くことではなかったともいえるかもしれません。
18世紀の最もグランド・ツアーが流行した時期には、青年貴族たちにとってグランド・ツアーとは、通過儀礼であり、常識であったといえます。
3.ツアーの費用と期間
こうした18世紀グランド・ツアーは、莫大な費用と時間がかかりました。
1年間で青年貴族1人につき300~400ポンド(現在の価格で500万円くらい)くらいと言われていましたが、それは最低限の生活費でもっと使った貴族もたくさんいました。
家庭教師だけでなく、召使や牧師も連れ、一家の家紋つきの馬車なども持っていったのですから、費用がかかるのは当然といえば当然です。
多くの青年貴族は数ヶ月から二年間程度までの比較的長期間を旅行に費やしましたが、豪遊できる貴族の中には6年や10年もグランド・ツアーをする人がいたのです。
19世紀以前のツアーは、公共交通機関も発達しておらず、期間も費用も非常にかかるものでした。一部の人々にのみ許されていたツアーであるということがよくわかりますね。
19世紀に蒸気機関車が登場し、トマス・クックがマス・ツーリズムをスタートしたことが、現代わたしたちが慣れ親しんでいる誰もが楽しめ参加できるツアーとなっていったのでした。
現代ツアーと18世紀グランド・ツアーの大きいな違いは以上3つがあげられます。
まだ通信も発達していなかった時代、長旅の危険も顧みずグランド・ツアーに参加した人々の意欲は、単に彼らの教養となっただけでなく、数々の文化交流や芸術の促進の起爆剤となっています。
18世紀グランド・ツアーの概要を少しずつ、このブログでお伝えします。
それと同時に、弊社がご提供する現代版グランド・ツアーの情報も発信しますので、お楽しみに!
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*エスパスミューズのグランド・ツアーとは?
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