日本でも話題となっているハラル市場の開拓。
ハラルとは、アラビア語で「許されている」という意味で、イスラム教の戒律を犯すことなく、イスラム教徒が生活全般で利用できる商品やサービスの市場を言います。
世界人口の約4分の1、約16億人いるイスラム市場を開拓することは、どこの国や企業にとっても今や一つのメインテーマとなっています。
このハラル市場において、よくトピックに挙げられるのが、食事です。
フランスでは、イスラム教徒は500万人近くいます。(ちなみに、在日イスラム教徒は約10万人【2014年現在】)。
その500万に近いイスラム教徒が、昨日から始まり約一か月の間、ラマダン(夜明けから日没までの断食)に入りました。
”断食”というとまったく食べないようなイメージが強いのですが、実はこのラマダン中は、日没からは家族で集まってお祭りのように食事をするのが習わしです。
そのため、むしろハラル市場がとても活性化するのです。
フランスでは、ラマダンの時期は、イスラム教徒の各家庭の食費が40%増加するという結果が出ています。Horizons Shoppers 2015の調査によると、ラマダンの1か月間で、3億5000万ユーロが消費されました。一家庭に換算すると、平日ならば食費は282ユーロであるところが、ラマダン期間中は394ユーロに増えるということです。特に、肉、香辛料、乳製品、生鮮食品や飲料水が購入されています。
2014年のフランスのハラル市場は55億ユーロでした。(日本は540億円【2014年現在】)。
この55億ユーロの市場が、仏スーパーのターゲットとなっています。
これまでは、フランスの一般のスーパーにハラル食品が置いてあるということはあまり見られませんでした。モロッコ人が経営者のスーパーでは一部置いてありましたが、それも少数でした。しかし、少しずつハラルフードのブランドも製品も増えてきています。
これに従い、大手スーパーの多くが、ハラル食品のPRをはじめています。
そして、特にラマダンの時期は、戦略上欠かせないプロモーションの時期となっています。
スーパーで試食コーナーをはじめとしたイベントをするだけでなく、各家庭にちらしを配ったりもしています。
こうして、ハラルといえば個人商店が主であった市場に、大手スーパーが乗り出しています。
フランスの一般消費者を対象にしたアンケートによると、60%の人が自分の行っているスーパーでハラルフードがおいてあることに気づいたと答えています。
50%が、自分の郵便受けにちらしが入っていたと答えています。
64%はハラルフードが陳列されているスーパーに満足しているということです。
ところが、多くのハラルフードの消費者にとっては、まだまだフランス国内ではハラル食品の選択の余地が少ないと言っています。こうした不満は55%の人が答えました。
しかし、2011年~2014年で、スーパーで売られているハラルフードの食肉加工品は6%増えています。また、ハラル認定されたコンソメは11%増えており、ハラルのスープは7%増えています。赤ちゃんフードについても4%増加したということです。
これに反して、ハラルの惣菜は3%減少しました。
これは、2013年にハラル肉と言われていた加工品に馬の肉が混じっていたというスキャンダルがあったことで、イスラム教徒が警戒して買わなくなったからだと言われています。
こうして大手スーパーが力を入れて市場開拓を始めましたが、それでも現在のところ、フランスのハラルフードの主要な売り上げは、個人商店によってなされています。
アジアのイスラム教徒と欧州のイスラム教徒はまったく同じではないものの、基本は同じです。
ハラル市場を開拓していく上で、マーケティングからPR、商品開発まで、日本の約50倍のイスラム教徒が共存するフランスのハラル市場開拓の動向に注視していくことは、日本のハラル市場開拓を考える際にも非常に有益であると言えるでしょう。
0コメント