すみれあれこれ

これからの時期の季節の花、といえば、「すみれ」。

花言葉は、「誠実」「謙虚」「小さな幸せ」です。


小さく愛らしい姿は、古今東西で愛されています。


日本での親しみは、歌に出てくるすみれの描写から伺えます。


万葉集に歌われた山部赤人の一首。

「春の野にすみれ摘みにと来し吾ぞ 野をなつかしみひと夜宿にける」


松尾芭蕉は、逢坂山の小関越で一句。

「山路来て何やらゆかしすみれ草」


白洲正子は、芭蕉の句に対し、「小関越は昔、大へんな難所で、旅の寂しさを噛み締めつつ、山路を辿っていた芭蕉にとって、枯葉の陰にすみれを見出した時の喜びは、現代人の比ではなかったであろう。万感胸にせまる思いをおさえて、さりげなく歌ったのがこの句ではないかと私は想像している。」と評しています。


山部赤人の歌も、松尾芭蕉の歌も、すみれの小さく奥ゆかしい美しさに対する著者の感動やそれを見守る温かい目を感じさせます。



西洋でも、すみれはとても愛されている花です。

ギリシア神話にも出てきます。

太陽神アポロンが美しい娘イアに一目ぼれしたのですが、イアには婚約者がいたためアポロンの愛を受け入れようとしなかったため、アポロンがイアをすみれに変えてしまったということです。


ドイツロマン主義の完成者といわれる詩人ハイネもすみれの歌を詠んでいます。

「瞳はまるで碧いすみれ」

 瞳はまるで碧いすみれ。

 頬はまるで赤い薔薇。

 手はまるで白百合の花。

 どの花も競うて咲いた。

 しかしーこころは腐っていた。」


これだけ読むと単に皮肉のようですが、ハイネの人生を知ると違う側面が見えます。

当時まだ非常に差別が厳しかったユダヤ人として生まれたハイネは、軽蔑の対象となることも多く、恋をしても素直に発展していくということが難しかったのです。

そうした背景を知ると、この詩に違う重みが出てきますね。


南フランスのTourettes-Sur-Loupでは、毎年すみれのお祭りが開催されます。

すみれの季節と春の到来を祝う1952年から開催されているViolet Festivalです。

2016年は2月27・28日の開催です。


すみれのあれこれ、いかがでしたか?


すみれという一つの花に、文化の様々な側面が見えてきて面白いですね。



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