バンクシー:アートと社会問題

グラフィティアーティスト、ストリートアーティストとして最も有名な一人、Banksy (バンクシー)。

ゲリラ的に世界のあちこちの都市で作品を作り、決して身分を明かさない謎の覆面芸術家としても有名です。「芸術テロリスト」とも呼ばれています。


そんなバンクシーが、移民問題をめぐる作品を創りました。


それがこちら。

そう、アップルの創始者Steve Jobsです。


スポークスマンを通じて、バンクシーは以下を声明しました。

「ぼくたちはしばしば、移民は国の資源を食い尽くすと信じ込むように仕向けられるけど、スティーブ・ジョブスはシリア移民の息子だった。アップルは世界で最も採算性の高い会社の一つであり、年間の法人税は70億ドル以上を支払っている。この会社が存在するのは、単にアメリカがこのジプシーの若者を受け入れてくれたからだ。」


この作品は、12月にフランス北部カレーで描かれたものです。

このカレーは、ドーバー海峡のフランス側に属し、以前からイギリスに渡りたい移民がチャンスを伺って待機することで有名な地域です。


ここに、シリア難民も押し寄せているため、今大問題になっています。


鉄道のトンネルを徒歩で歩いたり、電車の上にしがみついてそのままイギリスに渡ろうとしたりと、移民と列車が衝突する事故も多発。

地元警察は、カレー近辺の住民との問題も避けるため、彼らが寝泊りするバラックを壊し、強制立ち退きを実行しました。その際に、催涙スプレーを使ったのではないかと問題視もされています。


そんなカレーで、バンクシーは上の作品を描いたのでした。


ちなみに、バンクシーはイギリスで彼が中心になって期間限定で開催して話題になったDismalandの後の廃材を、このカレーの移民に向けて送ったということです。


アーティストは、歴史的にも、わたしたちの社会に覆いかぶさっている既存権力という巨大な岩盤に亀裂をいれ、そこから多様性や異なる価値観を提起してきました。戦時中に芸術が規制されたのもそのためです。


アートによる社会問題の提起は、これからますます多様な形態をとると予想されます。


アーティストは、この世界の価値を転換する人々ともいえるのです。

多様な芸術を包み込める社会は、豊かな社会といえます。


「異分子をどれほど受け入れられるかということによって、その組織の活力がわかる。ゆえに、異分子を受け入れられなくなった組織は、やがて死滅するだろう」。


これは、日本の新時代を切り開いた勝海舟が残した言葉です。


日本でのアートの豊かさを発展させていくことは、現代を生きるわたしたち全てのテーマだといえるでしょう。




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